発達障害(神経発達症群)の大学生は、就職に向けて動き出すとき、大学の障害学生センター等から就労移行支援サービスを受けることを勧められるときがあります。
就労移行支援サービスとは
障害者総合支援法に基づく就労支援サービスで、一般企業への就職を希望する障害がある方を対象としたものです。就職を希望する人向けに最大2年間、スキル向上やサポート、職場定着支援などを行うものです。スキルトレーニングには、ビジネススキルやソーシャルスキル、自己管理能力をつけるものなど様々なものがあります。
大学生の当事者が就労移行支援サービスを利用する場合のおさえておくべきポイントとしては、
問題はソフトスキル
大抵の場合、大学生になることができる学力をもった当事者にとっては、
仕事に直結するスキルであるハードスキルではなく、仕事や生活を組み立てていくためのソフトスキルの方が問題になることが圧倒的に多い
ということです。多くの当事者、特にASD傾向の強い人の場合、対人コミュニケーション能力や自己管理能力等で苦労しています。
そのため、ソフトスキルに対するスキルアップについての意識が高い、就労移行支援事務所を選択するのが一番いいでしょう。
オープンかクローズドか
発達障害(神経発達症群)の大学生にとっては、就職活動をする上で判断を迫られるポイントがいくつかあります。
その中でも最も大きなポイントの一つは、
就職活動を
オープン(つまり障害者であることを開示して行う)
か
クローズド(開示せずに行う)
かということです。
どちらも一長一短があります。
オープンの場合
長所:障害学生センターや就労移行支援事務所、ハローワーク等から継続的な支援を受けやすく、就職先が決まりやすい
短所:障害者枠での就職になり、給料面で苦しい
クローズドの場合
長所:うまく行けば、自分の能力の凸凹を最大限に生かした職場で働ける。また、収入的に自立できる
短所:うまく就職できず、自信を失って引きこもり状態になってしまう。あるいは就職できたとしても、発達障害についての理解のない職場に行ってしまい、潰れてしまう。
現在の職場環境の問題
発達障害(神経発達症群)の大学生にとって苦しいことは、一般枠での就職と障害者枠での就職の中間くらいの働き方ができる職場がなかなかないことです。一般枠の就職では、仕事の負荷に耐えられなかったり、職場に発達障害に対する理解がなかったりします。一方、障害者枠での就職ではやはり収入的に自立するのが難しかったりします。
当事者が自分の能力をきちんと発揮できて、かつそれなりの収入を得られる職場を提供できる企業が増えれば、当事者にとってはもっと生きやすい社会になるのではと思います。IT企業の中には特例子会社を上手に利用してそのような職場環境を整えることに努めている企業も出始めていると聞きます。将来的にはそのような企業が増えて欲しいです。