大学生になってからの困りごと
発達障害(神経発達症群)の人が経験する”困りごと”は、中高生のときと大学生になってからでは、少し種類が異なってきます。
中高生の間は、学校のクラス内での人間関係や、学校の課題をどうこなすのか、といった、いい意味でも悪い意味でも問題の所在が狭い範囲にありますが、大学生になると、自由な生活ができる反面、起こり得る”困りごと”は広い範囲になります。
自由な方が苦しむタイプもいる
大学生になると、中高生に比べれば自由にスケジュールを組むことができるようになりますが、発達障害(神経発達症群)の人のタイプによっては、どうしてスケジュールを組んだらいいのかわからず呆然としてしまうことがあります。
重要なイベントや試験などのスケジュールを把握することは、大学生くらいから自己責任になっていきますが、発達障害(神経発達症群)の人の中にはこれらのスケジュールが把握できず、忘れてしまう人がいます。以前の生徒さんの中には、大学入学後の新入生歓迎のためのガイダンスを全部忘れてしまっていて、大学から連絡が入ったそうです。
大学生になると、中高生のころに比べて人間関係の密度も一般的には薄くなりますが、人間関係が薄くなると人によっては自分の居場所がなくなり途方にくれてしまうことがあります。
また、人間関係を処理したり、人を見抜く能力に乏しい発達障害(神経発達症群)の人の中には、カルト宗教やいかがわしいイベントサークル等の間でトラブルになってしまうこともあります。
さらに、就職する人は就職に向けての準備を行う必要がありますが、対人コミュニケーションが苦手だったり、自己分析ができていなかったりでどう動いたらいいのかわからなくなったりします。
障害学生センターとつながる
そのため、発達障害(神経発達症群)の人は大学に入学したら、大学の障害学生センターとつながり、そこと組んで問題解決をしていくのがよいでしょう。逆に言えば、障害学生センターのサービスがよい大学を選ぶ、というのも大学選びの基準の一つになります。
障害学生センターでできること
障害学生センターでできることとしては、
などがあります。
メンタルヘルスの維持
大学生の中には親元を離れて生活している人もいらっしゃるでしょうし、それでなくても、親御さんの目から離れて生活をすることも多いでしょう。当事者の生徒が障害学生センターのスタッフと綿密につながっていることで、心身の不調により気が付きやすくなります。
ソーシャルスキルのトレーニング
当事者の生徒さんの中には、対人コミュニケーションやアサーション能力、自己管理能力に問題を抱えているという人もいらっしゃいます。この分野はなかなか自分ひとりでは問題点に気が付かない分野で第三者の助力を得た方がいい分野です。障害学生センターの中には発達障害(神経発達症群)の人のためのソーシャルスキル向上のプログラムを提供しているところもあります。
合理的配慮
発達障害(神経発達症群)の人の中には、授業を受けたり、学校の設備利用等で合理的配慮を受けたほうがいい場合があります。例えば、音が重なって聞こえるタイプなら、授業内容を録音して編集して聞くことが必要になります。この場合担当の講座の教官に合理的配慮を要求することになりますが、 発達障害(神経発達症群)の人の中には、自分の要求を相手に伝えるアサーションが極端に苦手な人がいます。このような場合、事情を熟知しているスタッフが間に入って説明すればうまくいくことがあります。
就労移行支援事業所での就労訓練
大学の障害学生センターの中には、就労支援事業所の就労訓練プログラムを提供しているところもあります。 発達障害(神経発達症群)の人がよく陥ってしまう困りごとにも対応して、職業訓練を行ってくれます。
私が個人的には、立命館大学の障害学生センターのサービスが細かいところまで行き届いて素晴らしいな、と思いました。少なくとも私が若い頃はこのような態勢は大学にはなかったです。