女性の発達障害(神経発達症群)の人の中でも特にASD傾向の人は、将来女社会で生きるかどうか決断しないといけない時期があり、苦労することがあります。
女社会の会話になじめない
ASDの特徴としては、”男性脳が強い”と言われており、論理的な明確さを追求する、物事を単純に正邪に分類したくなる極端な思考を好む傾向があります。逆に言えば、論点があいまいな会話や、起承転結がはっきりしない世間話のような会話、答えがない会話、に対してストレスを感じる人もいます。そのため、ASDの女性の中には女性同士の会話にうまく馴染めない人もいます。
看護師、保育士、清掃(ホテル・旅館の)業、接客業などの女性の比率が多くて女社会の職場だと、ASDの女性は非常に苦労していることがありました。
あるホテルのメッドメイキングなどで働いていた女性は、「毎回職場の年上の女性を褒めないといけないがしんどい」「そういう暗黙のルールが理解できない」とこぼしていました。普通の人だとただの愚痴レベルのことですが、ASDの人の中には、論理的に理解できない行動を取らされた場合かなりのストレスを感じることがあります。女社会の場合、表面的にはお互いを偽善的に褒め合いながら、内心は「あなたはどっちの女の方の派閥なの?あの部署にお局さんAの派閥なの?それともお局さんBの方の派閥なの?」探り合ったりします。わざとトラブルを起こしてパワーゲームをしかけてくる人もいます。そういう女社会の”政治”が理解できずに、ストレスを感じてしまうとのことでした。
医療関係者の女性で、研究職勤務から一般病棟での勤務に転籍して看護師に混じって働かないといけないときにも同種のしんどさを感じた女性もいらっしゃいました。
男性的な職場の方が楽という人も
ASDの女性の中には、女社会のあいまいな会話や人間関係、際限もなく続く「気遣い」、「褒め合い」が苦痛で、男性的な指揮命令系統がはっきりした環境の方が楽だという人もいました。そのため自衛隊や消防(救急救命士)のような職種を選んだ方もいました。
表面的には合わせることができるが、いつか潰れる
一般的には男性よりも女性の方が物事について融通が効き、他人と協調する能力が高いです。ASDにおいても同様で、そのため、ASDの女性の中には、本当は苦手だが、表面的には女社会の中でうまく人間関係を構築できてしまったりする人もいるのです。一定時間うまく振る舞える女性もいます。しかし、実際にはすさまじく消耗していて、ある日「ボキッ」と心が折れて潰れてしまう、ということがあります。
どの世界で生きるか決めておく
女性のASD傾向の強い人は、自分が人間関係でどこでストレスを感じるのか、どこまでが自分の許容量なのかをあらかじめ自分で知っておき、社会人としての自分が一番負担なく生きていくことができる環境を自分で選ぶ必要があります。一人で生きるのか、男社会で生きるのか、女社会で生きていくが消耗しないようにうまく距離を取って生きていくのか、をある程度決めておくことが必要です。
- 一人で生きるか
- 男社会で生きるか
- 女社会で生きていくが消耗しないようにうまく距離を取って生きていくか