発達障害(神経発達症群)の人が成長していく過程で真っ先に身につけて欲しい能力は何ですか、ともし聞かれたら、私は、「自分で自分を客観的に見る能力、つまりメタ視点で自分を見る能力」だと答えます。
もちろんこれは、発達障害(神経発達症群)の人にとっては難しいことの一つです。発達障害(神経発達症群)の人が第三者の立場から物事を見ることが難しいというのは、アン・サリー問題(リンク93)でも知られている通りです。
それでも、ほんの少しでもこの「メタ認知能力」を身につけていくと、当事者本人が生きていくのが少しでも楽になっていることが観察している身としては分かります。
多くの生きづらさの原因はメタ認知能力の問題
発達障害(神経発達症群)の人がよく体験する”困り事”のうち多くが、自分のことをメタ認知できる能力がないことに由来しています。
- 同じミスを何度も繰り返す。経験から学べない。
- 体調が悪くてパフォーマンスが落ちていることに自分では気が付かない
- 計画的な行動ができない
- 他者からみてふさわしくない”空気が読めない”行動をしてしまう
こういうことから望んでいる結果が得られずに、生きづらさを感じてしまうことになってしまいます。
メタ視点を持つ方法
では、どうすれば「自分で自分を客観的に見る能力、つまりメタ視点で自分を見る能力」が上がっていくのでしょうか。
有効なのは、保護者や支援者が、当事者に継続的にフィードバックを与えていくことです。「今日は調子がよさそうね」とか「今日しんどそうやね」というレベルでもいいです。自分の調子がいいか悪いか、自分では全くわからないタイプのお子さんがいたのですが、私や保護者の目から見たら丸わかりだったので、よく、「今日はしんどそうやったね」とかのフィードバックを返していました。小学生の頃から見させていただいていた生徒さんでしたが、高3くらいになってようやく、「もしかして私、今日調子悪いかもしれん」と自分で気がつくことができるようになりました。その生徒は空腹感覚があまりないタイプで、よく朝食を食べなかったのですが、低血糖になってしまうときがありました。高3くらいでようやく自分でそれを自己認知できるようになりました。薬(コンサータ)を飲み忘れたり、効力が切れ始めたときも、顕著に勉強のパフォーマンスが落ちていたのですが、これも高3くらいでようやく自分で気がつくようになりました。
この場合、自分のコンディションの状態に自分で気がつくことができたおかげで、
- お腹が減っていなくても決まった時間にある程度食べる
- 薬を決まった時間に飲む
ことを意識できるようになりました。自己観察能力は非常に大事で、これがないと自分で修正ができないです。
では、それ以外に「自分で自分を客観的に見る能力、つまりメタ視点で自分を見る能力」をつけるにはどのような方法があるのでしょうか?