ディスレクシアと即断する前に
発達障害(神経発達症群)の人の中には、文字をきちんと読むことができていない人がいます。ただし、ここで気をつけないといけないのは、字を読むことができない=LDあるいはディスレクシアであるとは限らないということです。字が読めない→LDだ、ディスレクシアだ、と即断しがちですが、そうでないケースも結構あるのです。
ディスレクシアあるいはLDでないのに字が読めていないケース
ディスレクシアやLDでないのに字を読むことができない理由としては、
自閉症傾向の人が持っている”思い込み”
が原因のときがあります。
ある生徒さんの勉強を見ていたときですが、ある時その生徒さんが、その視界にあるほとんどのカタカナ、アルファベットを読むことができていないことに気が付きました。本人に聞いてみたところ、私が指さしたそのカタカナやアルファベットのことをそもそも文字だとは認識しておらず、何か装飾のようなものだと思っていたそうです。私が「これは文字だよ」「カタカナだよ」と指摘するとびっくりしていました。広告(スーパーのちらし)やアート系の特殊書体は全く文字とは思っていなくて、そもそも視界に入っていませんでした。白抜き文字は参考書に書かれていたものでも、文字とは思っていなくて飾りだと思っていたのです。
自閉症傾向の人の中には、物事の概念整理が定型発達の人と違う、独特のふるい分けをしてしまっているときがあります。この生徒さんの場合、教科書体以外のカタカナやアルファベットは”文字ではない”、白抜き文字は装飾というふるいわけを、幼い頃に無意識にしてしまっていたのです。自閉症傾向の人の思い込み力はかなり強烈で、「これは文字でない」とふるい分けてしまうと、本人の視界から”消えた”状態になってしまうことがあります。
お母様が心配されて、地域のLDセンターに検査してもらったのですが、結果は”LDではない”とのことでした。
その後、生徒さんに、「これも文字」「このフォントも文字」「白抜き文字も文字」と教えていくと、最初は驚愕していましたが、徐々に受け入れていき、数カ月後には自然と読むことができるようになりました。
他には、
目の見え方に問題がある
ケースがあります。
両眼視機能障害をもっていると、適切に対象にピントを合わせることができない、視野が極端に偏っている、ということが起こり、目の前のテキストなどをきちんと読むことが出来ていないことがあります。(余談:こういう生徒さんでも、ゲーム画面はきちんと読むことができたりするので、「なんでゲームできて勉強できひんの」とお母様が愚痴をいったりします)
複視あるいは不同視を持っていると、LDとそっくりの状態になることがあります。その生徒さんもスポーツ(卓球)やゲームは問題なくできるのに、勉強は全くできませんでした。
LD、ディスレクシアが原因であれ、違う原因であれ、発達障害(神経発達症群)の人の中には文字の読み書きで苦労している人がいます。これらの人にとって助けになるかもしれないメソッドとしては、
があります。
*この項では、LD、ディスレクシアの用語が指す意味の違いについては厳密な定義をあえてせずアバウトに述べています。医学的に厳密な表現から見れば誤っているかもしれませんがご了承ください。