発達障害(神経発達症群)の人が勉強ができない原因としては、能力に非常な偏りがあり、苦手なことがボトルネックになってしまっていて能力を発揮できていないことがあります。
このページをご覧の方なら、療育や学校、カウンセラー等から、WISCやK-ABCⅡの検査を勧められたことがあるかもしれません。
発達障害(神経発達症群)の人の中には、WISCやK-ABCⅡの各項目の数値が非常にジグザグな山あり谷ありのグラフになっていることがあります。例えば、「継次処理」と「同時処理」の数値がどちらかが高くてどちらかが低いと極端な場合、授業を受ける際にかなりストレスを感じてしまうことが多いです。
自己評価が不安定になる
能力に非常な偏りがある人の場合、自分が得意なことをしているときは楽勝でできるので、「自分はできる」という自信をもっているところに、自分が苦手なことをすると、急にできなくなり自信をなくしてしまったりします。自分に対する自己評価が極度に上下してしまい、それに触れ回されて消耗してしまうことがあります。そのため、メンタル的なケアが必要な場合があります。
具体例
空間認知が全くできない
数学が非常に得意な生徒さんでしたが、どうしても空間図形問題が苦手でした。結局共通テスト本番で正二十面体の問題が出たのですが、ほぼ全滅でした。理科の天体の問題も苦手で、太陽が東から昇るのも知らなかったですし、「東」がどこかもわからなかったです。部屋の電球の交換も出来ませんでした。
もっともその生徒さんは、「抽象思考」の能力が圧倒的に高くて、能力検査でこれ以上計測できない、という能力が上位に振り切れた生徒さんでした。情報の抽象度が高ければ高いほど得意だ、というタイプで、数3の微積の10行以上かかる式変換もなんなく行うことができるほどでした。総合的には合格点を取って北大に合格しました。
同じことをするとすぐに飽きる
知能は低くないし、学習尺度、習得尺度自体は高い生徒さんがいました。しかし、複数の検査を組み合わせた結果は、「同じ作業を繰り返すと脳がすぐに飽きて、精度・スピードともに落ちてしまう」とのことでした。実際、漢字の書き取り、計算ドリル系の勉強はすぐにやる気をなくしました。このようなタイプの生徒さんは、従来型のドリルを使った継続学習は向いていないのでやめたほうがいいでしょう。この生徒さんは結局、関関同立のレベルの大学に進学しました。
まとめ
能力に非常な偏りがあるタイプは、今の日本の学校教育では苦労することが多いです。高度経済成長期において、日本の教育は総花式のゼネラリストを育てる教育が主流だったので満遍なくスキルを伸ばすことを求められました。現在ではかなり変わっていますが、それでも中学・高校の普通科はどうしてもそうなってしまいます。このタイプの人は、中学・高校ですべての分野で高得点を狙うのはかなり難しいですし、それを生徒さんに要求するのはかなり酷な話です。中学・高校の間は成績に関しては目をつぶり、本人にも我慢してもらい、その間に本人が得意な分野を見つけてもらう。そして、大学以降にその得意な分野に集中して飛躍してもらう、という形がいいのではないか、と思っております。
追加:
K-ABCⅡの読み方についてもっと細かい情報をお求めの方は、こちらのサイトのK-ABCⅡの結果の読み取りが参考になります。
また、発達障害専門のアセスメントを望まれる場合、
京都大学の船曳 康子先生が開発された、発達障害の特性の程度と要支援度の評価尺度 である
MSPA:エムスパ があります。