発達障害(神経発達症群)の人が勉強ができない原因として、文字をきちんと読めていないというのがあります。
ここで多くの人が真っ先にイメージされるのは、LD(学習障害)、ディスレクシアだと思われます。実際にそのようなケースももちろんありますが、明確にディスレクシアと診断されない場合でも、実際には文字を読むのに困難を持っていることがあるのです。
よくあるケース
眼の構造に問題があるケース
私が教えていた生徒さんに、非常にミスが多く、いつも文章を読み間違いをしている人がいました。なぜそうしてしまうのか最初はなかなか気が付かなかったのですが、あるとき、どうも読んでいる文章の上下が重なって見えているのではないか、と気が付き、本人に聞いたところ、「そのとおりだ」とのこと。最初は
LDだと思い、その後検査を受けたところLDではないとの診断が出ました。
様々なところに行ったのですが、最終的に明らかになったのは、「両眼視(機能)異常」ということだったのです。実際に彼の目を見ていると、対象物が目の前に近づいてきても、眼球が寄ることができていなかったです。目のピントを合わせる機能に問題があることがわかりました。そこで、専門家に 両眼視(機能)異常のためのメガネを作成してもらうことになりました。
東京にドイツマイスターというメガネ作成の専門家がいらっしゃいます。
脳が「これは字でない」と決めつけてしまっているケース
自閉症傾向の強い人に多いケースなのですが、脳が思い込みで情報にラベリングしてしまっていることがあります。ある生徒に、カタカナ全部とアルファベットほとんどが読めていない人がいました。これも最初LD、ディスレクシアではないか、と思っていたのですが、専門家の診断は「自閉の影響が大きい」とのこと。実際、注意深く接していくと、彼の生育の過程で、どうも、カタカナを文字ではない、とラベリングしてしまったことがあったようで、それ以後全く読まないという判断を脳でしてしまっていたのでした。学校の授業でも、カタカナを全く読んでいなくて、周りの人の会話から類推したり、話を合わせているだけだったのです。
アルファベットも、最初に習ったフォント以外はアルファベットではない、というラベリングを脳でしてしまっていました。そのためほとんどのアルファベットは読まずにいました。本人に聞くと、「これは飾りだと思っていた」とのことです。
カタカナ、アルファベットともに、白抜き文字や広告などに多い変形フォントなどは一切文字だと思わず、視界に入れても読んでいなかったのです。それくらい、自閉の人の脳の思い込みは強烈です。
このような傾向の生徒は、一度、「このフォントのカタカナも昔習ったフォントと同じカタカナなのだ」と脳が認めると急に読めるようになったりします。
その生徒も今では、一般の人とあまり変わらない状態になりました。
触るグリフ
字が読めない、書けないというタイプの人は「触るグリフ」を試してみるのもいいかもしれません。LD、ディスレクシアであろうとなかろうと、字の読み書きが苦手であれば、試してみる価値はあります。