発達障害(神経発達症群)の人の中には、教科の好き嫌いが極端な人がいます。英語は勉強するが、数学は絶対に勉強しない人。逆に、数学は勉強するが、英語は絶対にしない人もいます。普通の好き嫌いの域を超えて、その教科を始めようとすると、まるで殺されるような目にあうかのように絶叫して抵抗する人までいます。
感覚と価値判断の結びつきが強すぎる
発達障害(神経発達症群)の人の中には極端に物事の好き嫌いが激しい人がいることが知られています。感覚に対する感受性が非常に強いタイプに多く、特定の味覚や触覚、音に執着することが多いです。ある味覚の食べ物だけを偏食して、嫌いな味覚は食べない。ある肌触りの服だけを着て、嫌いな触感の服は絶対に着ない、などです。脳の中で感覚と価値判断が直接結びつきすぎて、融通が効かなくなっているのです。
教科についても同様で、本人の脳が、「コレは好きな教科、コレは嫌いな教科」と決めてしまうと、嫌いな教科をするときに、まるで偏食の子が嫌いな食べ物を食べたときの反応のように、強烈な拒絶反応を起こしてしまいます。
場合によっては、嫌いな教科をするときに、フラッシュバックを起こすこともあるようです。
さらに、自閉傾向の強いタイプの人の中には、嫌いな勉強をする際に、最初からマイナスの暗示をかけてしまっている人もいます。「私は数学ができない。だからこの問題は解けない」という暗示を自分にかけていて(本人は自分で気がついていない)、本人の能力からすると解ける問題も解けない状態になるように自分をもって行き、それで自分を納得させてしまうのです。
脳が「できる」と思うことが大事
このような勉強の好き嫌いが激しいタイプは対策が難しいのですが、できることとしては、
1,簡単な問題を解いてもらって、本人の脳が「できる」と思うようにさせる
上記で述べた通り、発達障害(神経発達症群)の人の中には、嫌いな教科に対して最初から、「私はこの教科ができない」というプログラムが入ってしまっていることがあります。その場合、まずは、そのマイナスのプログラムを解除する必要があります。そこで、その教科に関して、問題のレベルを極端に落として、場合によっては小学生レベルから始めて問題を解いてもらい、生徒さん本人の脳に「私はこの教科の問題は解けるのだ」と学習してもらうことが必要です。短期的には成績が上がりませんが、辛抱強く取り組めば徐々に定着していきます。このタイプの人は、いい意味でも悪い意味でも暗示にかかりやすいタイプなので、まずは本人の脳が「できる」と思うと、脳がその教科にたいして拒否反応を示さなくなります。
2,とにかく「待つ」
保護者の方にとっては心配ですし、忍耐が必要なことですが、生徒さん当事者が「やろう」と思うまで待つ、というのも一つの選択です。過去の生徒さんでも、英語は異常に得意だったのですが、数学に関しては、中学3年間、そして高校3年の夏まで、徹底的に嫌がり逃げ回っていた人がいたのですが、高校3年の夏にようやく手をつけ始め、1年間浪人したものの、有名私大の理系に合格した人もいました。
また、逆に、数学が得意で英語を徹底的に避けていた生徒さんがいましたが、大学受験に英語が必要であることをなんとか納得して(ASD傾向のある人の中には、理屈で納得すれば動けるタイプの人もいます)、なんとか英語を学習して北大に合格した人もいました。
待つ、というのも選択肢です。