発達障害(神経発達症群)の人が勉強ができない状態になってしまう理由の1つとしては、「こだわり」がでてしまうことが原因としてあります。難しい言葉で説明すると、「固執性(こしゅうせい)」ということになるのですが、発達障害(神経発達症群)の人の特にASD傾向の強い人は、自分のやり方や手順に強いこだわりを持ち、その通りにしないと、諦めたり、フラストレーションを発生させたりすることがあります。
自分が決めた順番でしかしない
勉強面でよくあるのは、自分が決めた順番でしか問題を解かない。というものです。問題を解く際に、わからない問題があった場合、それを飛ばして解きやすい問題から解いてみるということがなかなかできません。物事を処理するのに、常に1方向から進む処理を好むので、プランB、プランCを考えておくことをしない傾向があります。そのため、テストなどで、例えば、大問3で詰まった場合、大問4や大問5に向かわず、そのまま大問3で何十分も使ってしまったりするのです。
対策
このタイプの場合、保護者や支援者は当事者の生徒に対して、普段から様々な順番で問題を解かせるように練習させるとうまくいくことがあります。例えば、家で宿題をする際に、わざと大問5→大問4→大問3の逆順で解いたり、あるいはランダムな順番で解く練習をするのです。そうすると、当事者の脳は、「あっそうか、別の順番で問題を解くこともOKなんだ」と学習できることがあります。
その他に、発達障害(神経発達症群)の人は「余白を適当に埋める」「自分の意見を書く」ということができなかったりすることがあります。
余白を適当に埋めることができない
ある中学生の生徒は、夏休みの宿題で理科の自由研究をしないといけませんでした。非常に理科分野が好きな生徒で、頑張って調べて用紙のほとんど全部を埋めたのですが、少し余白が残りました。普通なら、「インターネットで何か調べて、適当な文章を作って埋めておいたらいいじゃないか」と思うのですが、余白に何を書いたらいいのか決めることができず、結局「何も書けない」ということで提出をしませんでした。
自分の意見を書くことができない
これもASD傾向の強い人にあることなのですが、物事についての客観的な記述はできるのですが、自分の感情や意思を表示することができないタイプの人がいます。このタイプの人の場合、「あなたの意見を述べてください」と言った質問に対して何も書くことができなくて、白紙で出してしまうことがあります。入試の志望動機書に記述することや、就職の面接において自己PRを言う場でも何も言えなくなったりしてしまいます。これは「何をしたらいいのかわからない」とも関係します。
考察
発達障害(神経発達症群)の人が「こだわり」を強く出してしまい前に進めない場合、「こだわり」という態度を取ることで、「私はもう無理だ、しんどい」という意思表示を示していることが多いです。ちょっと種類は違いますが、イヤイヤ期の幼児の態度と似ている面があります。保護者からすると、「せっかくここまで宿題をしたのに、提出しないのはもったいない」と思われるかもしれませんが、仕方がないです。「もうしんどい」という意思表示を示していることが多いので、これ以上頑張るように仕向けても気持ちが前を向かなくなることが多いです。
成長すると改善することも
安心していただきたいことは、「こだわり」が強いお子さんも、脳が成長するにつれて脳の統合が進み、融通が効くようになることがあるということです。中学の頃に「こだわり」が強く、理科の自由研究の余白が埋まらない→埋まらないから提出できない。と言っていた生徒さんも、大学では、「あんまりわかっていないけど、それなりにわかったようなことをレポートに書いといて、とにかく単位を取ったわ」と言っていました。成長するにつれて、脳の適応力が上がることがあるので、焦らずに待つことも必要です。