同時処理ができないタイプの場合、聞くことを優先したほうがいいです。
同時処理ができないタイプ
発達障害(神経発達症群)の人の中には、同時処理が苦手な人がいます。勉強でいうと、
- 聞きながら書く
- 聞きながら理解する
- 書きながら理解する
という同時処理が苦手だったりします。
よくあるのが、
頑張ってノートに写したが、結局授業内容をまったく覚えていない
字を書くのが苦痛で途中で嫌になって写すのをやめた。しんどくなって授業も聴いていない
授業内容を聞いたものの、記録にとっていないので
1週間経ったら全部忘れた。どこが試験範囲かも知らない
というものです。
聞くか書くかのどちらかに集中する
同時処理が苦手な人の場合、たいていは「聞く」か「書く」かのどっちかに集中するように指示したほうがいいことが多いです。
そして大抵は「聞く」「理解する」ことに重点をおくように指示したほうがいいでしょう。というのは、授業内容が理解できないと「置いてきぼりにされた」という気持ちになり、それが勉強することに対するモチベーションを下げ、理解できないまま次に行くことでさらに「わからなく」なり、さらにやる気がなくなる、という悪循環に入るからです。(ただし、複数の音が重なって聞こえるタイプだと授業を聞くことだけに集中しても理解するのが難しいときがあります)
「聞く」ことを優先した方がいいことが多いのは、「書く」という行為に苦痛を感じているタイプが多いからです。特に自閉傾向が強い人は書く行為に抵抗を感じる人が一定数います。
「聞く」だけだと中学以降苦しい
ただし、「聞いて」理解したつもりでそのまま行くと、小学生くらいの内容まではそれでなんとかなることもあるのですが、中学生くらいになり勉強の内容の抽象度が上がってくると、聞いて理解したつもりだけだと苦しくなってきます。
なぜなら「聞いて理解した」だけだと実は勉強の内容をよく分かっていなかったりすることがあるからです。
学校の授業やプリントのまとめは、その範囲の内容をその先生や本が一つの視点・観点から整理したものです。つまりその情報全体をどう捉えるのか最初から方向性が定まっています。だから聞いている人が「わかったつもり」になるのです。でもそれはある情報をひとつの視点で見ただけなのでわかっていなかったりすることもあるのです。
理解するにはアウトプットが必要
本当に理解するにはアウトプットしないといけません。自分でノートをまとめたり、様々なタイプの問題を解くことで、これは別の観点もあるのか、と知る必要があるのです。そうやって情報の全体像を捉えることができるのです。
学校教育とはよくできていて、きちんとしたカリキュラムが組まれていて、そのカリキュラムをこなすことで自然とアウトプットやフィードバックができるように計画されています。逆に言えば、そこをサボると、アウトプット、フィードバックというプロセスが入らないので、学習内容がうまく定着しないのです。
アウトプットが必要であることを受け入れる
この学校教育のカリキュラムに対しては、「こういうものだ」と受け入れてとにかく頑張ってこなすタイプもいれば、そうでないタイプもいます。女子は前者が多く、女子が学校の成績がいい理由の多くはそれが理由です。
アウトプットする勉強をするようになるには
では、後者のアウトプットしないタイプの人の場合はどうすればいいのでしょうか?
このようなタイプの場合、できることは2つくらいしかありません。それは、
・本人に納得してもらう
ASD(自閉症スペクトラム障害)の人の中には「納得しないと動けない」人がいます。そういう人は、
アウトプット→フィードバック
のプロセスがなぜ必要なのか自分で納得する必要があります。本人が、「アウトプット→フィードバック」は必要だと感じる体験をしてもらいます。
・時間をかけていつの日かアウトプットをするようになるまで待つ
発達障害の人の中には「書く」ことが苦痛な人が多くいます。そのため書くことに対して、ある程度余裕ができて、負荷が下がる年齢になるまで待つという選択をします。
余談ですが、ASDの人の中には、あとでこっそりと、
「アウトプット→フィードバック」
のプロセスを実行していることがあります。
ASDの人の中には「自分の過ちを認められない」(リンク)人がそこそこいます。このタイプの人は「自分が間違っていて、相手が正しいかもしれない」とわかっていても、それを相手に伝えたりはしません。アウトプットの必要性を相手に指摘された際、そのときは反応せずに、あとでこっそりと試したりします。そして、うまくいくと、自慢げに「そんなん前から知っていたわ」と偉そうに話したりします。
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全体像を「見える化」する
アウトプット→フィードバックをするのがなぜ重要なのかというと、自分が何を学んだのかの全体像が「見える」ということがあります。これをしないと自分が何をしたのか、何がわかっていて、何がわかっていないのかわからなかったりします。テストに向けて自分が何がわかっているのかわかっていないのかメタ視点が持てないのです。ひどい場合は、教科書のどこからどこまでがテスト範囲かわかっていなかったりするのです。
まとめ
- 同時処理が苦手な人は、「聞く・理解する」を優先したほうがいい
- ただし勉強の抽象度が上がるとそれだけでは難しくなる。アウトプット→フィードバックをしないと理解はできない
(リンク130) - 自分が何を学んだのかの全体像を「見える化」することが大事
その他の対策
合理的配慮
その他の対策としては、学校側に合理的配慮を求める方法もあります。学校側から許可が下りれば、その生徒だけ穴埋め式のプリントという形で授業内容を発行してもらう、あるいは授業の録音を許可してもらうというようにします。
身体的な方向からのアプローチ
身体的な方向性からアプローチすることもできます。身体的なアプローチとしては、
などがあります。