雑学は多く知っているが実際にはわかっていない。
言葉の意味が実際にはわかっていない
発達障害(神経発達症群)の人が勉強ができない原因として考えられる1つとしては、多くの言葉の意味について実際にはわかっていない、あるいは別の意味だと思っているというのがあります。
もちろん誰だって言葉の勘違い、思い違いはあります。しかしそれとは比較にならない質・量でそれぞれの言葉の意味を理解せずに使っていることがあります。これは日常語で間違っていることもあれば、学問用語で間違っていることもあります。これが蓄積すると、勉強で使う言葉の抽象度が上がってくる中学生ごろから急に勉強ができなくなってくることがあります。
社会的文脈での意味はわかっていない
特にASD(自閉症スペクトラム障害)傾向の強い人に多いのですが、自分の興味がある分野については異常なくらいの知識欲をもち、その分野についてのとてつもない単語を覚えていたりします。そのため保護者や支援者はその当事者のことを語彙力がある人だと勘違いしてしまうのですが、そうではなかったりすることがあるので注意が必要です。単語を覚えることに執着する反面、その単語がそれぞれの分野でどのような文脈で使われているのかを確認しない、頓着しない傾向が強いからです。
社会的文脈での意味がわからない理由
発達障害(神経発達症群)の人が、言葉の意味を間違って理解してしまっている理由としては、2つあります。
- 1つは、その言葉についての具体的なイメージを持つことが実際にはできていないために、間違った使い方をしても気が付かないということです
- もう1つは、それぞれの言葉が指している意味の範囲が一般の人とずれてしまっており、それが修正できていない、というのがあります。
抽象的な話ばかりだとわかりにくいと思われるので具体的な例を挙げて見ましょう;
- 京阪電車で移動
あるASDの生徒さんは毎週京阪電車で移動する用事があるのですが、他の時間でも来ることができるのに、必ず同じ電車に乗って来ていました。京阪の他の時間の電車でも来ることができたのにも関わらずその電車しか乗らない理由を、最初は固執性が理由だと考えていたのですが、やがて意外なことが判明しました。
- 京阪電車とは「3ドア車のこと」である
それは、その生徒が
京阪電車というものは、その線路で来る電車のうち「3ドア車」の車両のみを京阪電車だと思っていたからだ、ということでした。
上記の例は「それぞれの言葉が指している意味の範囲が一般の人とずれてしまっており、それが修正できていない」でしょう。
このように、様々な言葉の意味について、一般的な意味とずれて覚えてしまっていることが、本人も支援者も知らないまま、数百、数千、と積み重ねられてしまっていることがあります。
勉強の用語に関して言えば、特に中学以降になると、言葉の意味を間違って覚えていると徐々に致命的な理解のミスになってしまい、やがて勉強の理解ができなくなってしまうこともあります。
対策
そのため、このタイプの人と学習する際は、質問の中で日常語でも学問用語でも、本当にその言葉の意味がわかっているのか会話の中で確認していく必要があります。あまりしつこいとウザがられるので加減が大事なのですが、この作業をしないと、当事者がどこで間違っているのか、なぜこのような行動をするのか、支援者は気が付かなかったりします。