京都の西部地域で家庭教師を行っております。主に発達障害のお子さんの家庭教師をしております。


同じミスを繰り返してしまう


発達障害(神経発達症)の人の中には、どうしても同じミスを繰り返してしまう人がいます。何度気をつけても繰り返してしまうため、自己評価を下げてしまうことになってしまいます。

例えば、

複数の情報を保持するのが苦手

高校1年のA君は、英語の授業で毎回「時制の一致」を間違えてしまう。たとえば、「He said he is tired.」と書いてしまい、「was」に直すように先生に指摘されるが、次の課題でもまた同じミスを繰り返す。彼は「言ってることはわかるんだけど、書くときに頭から抜ける」と話す。授業中に理解していても、実際のアウトプットの場面では、文の構造や意味に集中するあまり、文法の細部が抜け落ちてしまうのだ。

あるいは、

持ち物を毎回忘れる

中学3年のBさんは、毎週火曜日に美術の授業がある。必要なのはスケッチブックと鉛筆セット。前日に「明日は美術だ」と思い出して準備するのだが、翌朝になると別のことに気を取られ、結局忘れてしまう。学校に着いてから「また忘れた…」と気づき、先生に借りるのが恒例になっていた。彼女は「自分がだらしないだけ」と思っていたが、実は注意の切り替えが苦手で、朝のルーチンに「持ち物確認」が入り込めないのだ。ToDoリストを作っても、見るのを忘れてしまう。周囲には「毎週同じなのに、なぜ覚えられないの?」と言われてしまう・・・。

というのはよくあることです。

発達障害(神経発達症)の人が同じミスを繰り返してしまう理由

発達障害の人が同じミスをする理由としてよく挙げられるのが、

1,ワーキングメモリの制約

ワーキングメモリとは、情報を一時的に保持しながら操作する脳の作業台のような機能です。A君のように「時制の一致」を理解していても、主節と従属節の時制を同時に保持し、文脈に応じて適用するには高いワーキングメモリ容量が必要です。容量が限られていると、文の意味に集中するあまり、文法の細部が抜け落ちるという現象が起こります。

2,注意制御と切り替えの困難

Bさんのケースでは、「前日に準備しても翌朝に忘れる」という現象が繰り返されています。これは、注意の切り替えが苦手で、朝のルーチンに“持ち物確認”という新しい行動が入り込めないことが原因です。ToDoリストを作っても、それを見るという行動に注意を向けること自体が難しい。これはADHD傾向に見られる「注意の持続・切り替えの困難さ」によるものです。

3,習慣化・自動化の困難

両者に共通するのが、「毎回初めてのように感じる」という感覚です。これは、行動や知識が自動化されず、毎回意識的に処理しなければならないためです。定型発達では、繰り返しによって行動がルーチン化され、脳の負荷が減りますが、発達障害のある人では習慣化の回路がうまく働かず、毎回“初学者モード”で処理することになります。

4,フィードバック処理の弱さ

「前回間違えたから今回は気をつけよう」という学習がうまく働かないこともあります。これは、過去の失敗からのフィードバックを保持・活用する力が弱いためです。特に、感情的な記憶や抽象的なルールを汎化する力が弱いと、「同じ場面で同じミスをする」ことが起こります。

5,情報の符号化と検索のズレ

記憶の中に情報があっても、それを必要な場面で取り出す(検索)ことが難しいケースもあります。A君は「授業中はわかっている」のに「書くときに抜ける」と言っていますが、これは符号化された情報が文脈に応じて検索されないという認知的ズレです。

昭和の教育でよくあったこと

昭和の教育でよくあったことなのですが、「よかれ」と思ってやっていたことが裏目に出てしまっていることがあります。

Warning

昭和の小学校の先生によくあったのですが、学校の提出物や給食費・給食袋を忘れた子に対して、黒板で名前を書き、持ってくるまで常にみんなの前で指摘する、ということがよくありました。「大人になって社会に出たら、モノをしょっちゅう忘れる人は相手に迷惑をかけるし、他人から信用されない。本人は嫌かもしれないけど、大人になって本人が苦労する。だから今のうちにきっちりとしつけておくのだ」と言っていた先生が大勢いらっしゃいました。実際、社会の価値観から見ればそれは正しいし、先生方も良かれと思って怒っていらしたと思います。しかし、後で調査機関が追跡調査をしたところ、そのようにして怒られた子が、現在40-50代になって多くが、「ニート」「引きこもり」になっている、ということがわかったそうです。つまり、そのような「社会の常識」という視点で怒っても仕方がない、というところまでわかっています。

このような子はどうしても、家庭、学校、会社で怒られてしまうのですが、怒られてしまうと、

自己評価下がる⇒余計ミスを繰り返す⇒自己評価下がる⇒余計ミスを繰り返す⇒自己評価が下がる

というデフレスパイラルに陥り、結局、

他罰・自罰的行動

をしてしまうことになってしまいます。(ADHDの人の問題行動は、かなりが本人の自尊心と関係してきます)

最悪の方向性に行くと、反社会性パーソナリティ障害になってしまうこともあります。

構造化・個別化による解決

このような問題を一気に解決するのはなかなか難しいです。もちろん、コンサータやストラテラのような薬品に頼って効果がでることもありますが、すべての人が完全に満足できる成果になることはまずありません。各人の特性はそれぞれで、それぞれの人に合わせて解決策をカスタマイズする必要があります。共通するのは、「構造化」が必要だということです。

構造化とは

「構造化」とは、情報や行動を整理・体系化し、認知的な負荷を軽減する支援方法です。特に発達障害のある人にとっては、曖昧な指示や複雑な状況が混乱を招きやすいため、手順やルールを明確にし、視覚的・時間的に「見える化」することが重要です。たとえば、持ち物確認を「順番カード」にしたり、学習内容を色分けや図式で整理することで、脳の処理効率が高まります。構造化は、行動の予測可能性を高め、安心感と自律性を支える土台となります。

具体的には、

 A君のように時制の一致で繰り返しミスをする生徒には、構造化による支援が有効です。例えば、「主節が過去なら従属節も過去」というルールを、色分けされた例文カードで提示します。主節は青従属節は赤で示し、視覚的に時制の関係を強調することで、抽象的な文法ルールを具体的に理解できます。また、英作文時には「主語+過去動詞+that+主語+過去動詞」というテンプレートを使い、構文の型を定着させます。これにより、ワーキングメモリの負荷を減らし、情報の保持と適用がスムーズになります。構造化は、理解と実行の間にある認知的なギャップを埋める橋渡しとなります。

Warning

これはあくまで一つの例で、万能ではありません。人によって効果的な「構造化」は違います。あるオタク少年の場合は、ホロライブのキャラの切り抜き画像を問題集の大事な場所に貼ると、急に集中力が上がりました。人によって集中力が上がるトリガーは違います。

 Bさんのように「持ち物を毎回忘れる」という人の場合には、「todoリストを見る習慣」そのものを定着させる必要があります。

「ToDoリストを見る習慣そのものを支援する」ためには、リストの存在を“思い出す”仕組みを構造化する必要があります。例えば、Bさんの部屋のドアに「今日の持ち物チェック!」という視覚的トリガーを貼り、ドアを開ける前に自然とリストに目が向くようにします。また、スマホのアラームを「美術セット確認」と命名し、火曜の朝に鳴るよう設定すれば、聴覚的なきっかけにもなります。さらに、チェックリストを「朝のルーチンカード」の一部として組み込み、歯磨き→着替え→持ち物確認という順番で視覚的に並べることで、行動の流れに自然に組み込むことができます。これにより、リストを見るという行動自体が“習慣化される前提”で支援されるのです。

他の原因

上記は、発達障害(神経発達症)の人が同じミスを繰り返してしまう典型的な理由ですが、実際には他の原因もあります。例えば、

同じ作業を続けられない

発達障害(神経発達症)の人の中には、同じ作業をし続けると、ある時間から急激に精度が落ちる人がいます。要するに「飽きっぽい」人です。私が以前見た生徒さんは、WISCの「継続性」の数値が飛び抜けて低く、数値の上ではっきりと示されていました。このようなタイプの人は、漢字の書き取りや計算ドリルのような勉強スタイルはかなり厳しいでしょう。実際この生徒さんは、同じ練習を繰り返せば繰り返すほど精度が落ちていきました。

心のなかで(無意識的に)その作業に対してNOと言っている

発達障害(神経発達症)の人の中には、自分の意思表示をするのが苦手、あるいはそもそも自己認知ができていない人がいます。本当はその作業をしたくないけど、意思表示ができない、あるいはそのことを認知できないときに、無意識的にミスを増やして「私はこの作業が嫌いだ」と示そうとします。

このあたりは定型発達のお子さんでも、まだ幼いお子さんはよくやる手だとは思います。

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