
発達障害(神経発達症)の人の中には、社会的な問題に対して極端な意見を持ってしまう人がいます。
その理由としては、脳が興奮しやすい、あるいは脳が興奮を求めてしまう、というのがあります。
自分の脳が興奮しやすいことに気がついていない
発達障害(神経発達症)の人が興奮しやすい理由としては、以前指摘したように、脳が快感神経の興奮に依存しやすいというのがあります。さらに自己観察・自己制御能力、いわゆるメタ認知能力に乏しいために、自分が興奮しやすい状態になっていることに気がついていないことが多いです。
さらに、
ASDタイプの傾向
ASDタイプの人の中には
・体が緊張状態になりやすい
・狭い分野のみを掘り下げてしまう思考に陥りがち
・外界に対する恐怖心が強い
という問題を抱えていることがあります。このような問題を抱えている人は、外界に対してステレオタイプの価値観を持ちそれに凝り固まりやすい傾向があるのです。
また、ASD(自閉症スペクトラム障害)の傾向が強い人の場合、一度考えるパターンを固定化してしまうと、その考え方を変えるのを嫌がる(固執性)というのもそれに拍車をかけています。一度変な価値観を持ってしまうととそれを変えるのを嫌がってしまうのです。
ADHDタイプの傾向
それとは別にADHDタイプの人の中には、
・脳が退屈を極度に嫌がる
という人がいます。平凡な状態、変わらない状態に耐えられない、常に刺激がないと憂鬱になる、というタイプのADHDの人の場合、刺激的な価値観や言動に飛びついてしまう、ということはよくあることです。その情報が間違っているとかを吟味するのがとにかくまどろっこしく、今までの「常識」をひっくり返すような物事なら喜んで受け入れてしまうのです。
「脳が退屈を極度に嫌がる」タイプの人の中には、長年海外をずっと放浪している方もいらっしゃいました。その人によると、「日本の街はどこも同じ町並みですぐに飽きてしまう。同じような風景を見続けていると鬱になる」と言っていました。その方も極端な価値観を持ちがちでした。
インターネット上の極端な意見に引っ張られて興奮する。
youtuberやSNSのインフルエンサーの中には極端な意見を言うことで相手の注意を引くようにしている人がいます。あるいは、芸能ニュースや政治的意見についてあえてヘイトを稼ぐことでアクセス数を稼ごうとしている人もいます。こういう意見に染まったり、過度に噛みついたりすることで、平常心を失ってしまうことが多いのです。
陰謀論
極端な意見に引っ張られてしまうタイプの人に多い特徴としては、いわゆる「陰謀論」に影響されてしまうというのがあります。
現代の世の中は、あまりにも個々の分野が複雑になりすぎて、専門家以外そのことについてわからなくなっています。「自分がわからない」という状態は、先が読めないという不安感や、「自分にはどうしようもない」という無力感を生み出しがちです。そこで、いわゆる「カリスマ」のような、「実はこれが真実だ」「日本が悪いのはこいつのせいだ」と虚偽のことや、極度に単純化した言説を見聞きして、脳が「そうだったのか」と興奮してしまうのです。
陰謀論を信じる心理的背景
陰謀論を信じてしまう人がもっている心理的傾向としては、「報復心理」というのがあります。
スタッフォードシャー大学とバーミンガム大学の心理学者、デイビッド・ゴードン博士とメーガン・バーニー博士らの研究チームは、陰謀論を信じる人々の心理を探るために1,000人を対象にした3つの実験を行った。
その結果、陰謀論を強く信じる人ほど「報復的な心理」が強いことが判明した。
出典:カラパイア 記事 パルモ (著)公開: 2025-03-13
との研究結果でも明らかなのですが、陰謀論を信じる人の傾向としては、
自分の人生がうまくいっていない
⇒うまく行っていないのは自分のせいではない
⇒〇〇のせいだ(と思いたい)
という性格の人が多いのです。自分は恵まれていないという不公平感を持っている人は特にそういう心理的パターンに陥りやすいです。
このようなタイプの人は、自分が陰謀論を信じてしまうのは、自分の中にある不公平感とそこからくる報復的心理が原因なのだということに、たいていは気がついていません。なぜなら、このようなタイプの人は、自分の心のパターンを自分で認知する能力に乏しいことが多いからです。(これは知能の高さとは関係ありません)
自己観察能力をつける
発達障害(神経発達症)の人が視野狭窄に陥らないようにするためには、まずは、公平で幅広い情報源から世の中の情報を集める、という習慣を付ける必要があるでしょう。現代のSNSなどは、過去の視聴履歴からアルゴリズムが、その視聴者が好みそうなコンテンツを自動的に表示するようになっているので、どうしても情報源が偏ってしまいます。どんどん偏った情報源に引っ張られてしまうことになるのですが、本人は気がついていません。ですから、様々な情報源からものを見るという習慣とつけることが大事です。
しかし、究極的には、やはり自己観察能力をつける、というのが一番の解決策になります。一般的に発達障害(神経発達症)の人は、自己観察能力、メタ認知能力が乏しく、自分の価値観や思考パターンを自分で客観的に観察することが苦手なことが多いです。この能力を身につけることが、遠回りかもしれせんが、一番本質的な解決策になるのでは、と考えています。