きちんと椅子に座れない

発達障害(神経発達症)の人の中には、体のバランスを取るのが苦手で、椅子にきちんと座ることができない人がいます。「態度」が相手に対する「誠意」を示すという日本の文化においては、相手から「何だその態度は」と怒られてしまうことがあります。
スコ座りでしか座れない

独特の身体感覚をもっている
発達障害の人に中には、定型発達の人に比べると独特の身体感覚をもっている人が多いです。
その中でも体のバランスをとることに苦労している人がある程度いらっしゃいます。一般の方のように「自然に」体のバランスをとることが難しくて、自分の体をぶらぶらさせている生徒さんもいました。
結局その生徒さんにとっては一番楽な姿勢が、いわゆる「スコ座り」といわゆる姿勢で、要するに尻で座っているのではなく、腰で座っているわけですね。上のアイキャッチの画像もスコ座りです。プールなどで水の中にいるときにはそれなりに体のバランスを整えたりすることができるようなのですが、陸上だとどう座っていいかわからずに、転んでしまったりすることがあるので、結局スコ座りになってしまったようです。
支援者や理解者が必要
上記のような発達障害の人は、学校や職場などでいい支援者や理解者を得られないとトラブルになってしまうこともあります。
スコ座りと言っていますが、要するに「おっさん座り」であり、会社の重役が「部下の話を聞いてやっている」みたいな座りかたなので、上司やお客様、あるいは先生に対してそのような態度をとると「なんだその偉そうな態度は💢」となってしまうことがあります。その場に経験のあるジョブコーチなどがいるとうまく間に入って場を収めることができるのですが、そううまくいかないケースもあるでしょう。
日本のような社会は姿勢や態度で相手への敬意を表すという文化なので、姿勢が悪かったりすると誤解されてしまうことになってしまいます。「なんだその態度は💢」という言葉に示されるとおり、態度で誠意を推し量るわけですね。この点アメリカのような社会の方がこのタイプの人は少し楽ですね。
アメリカ人からすれば、日本人の態度は少しrigidすぎるし、マナーなどはOCD(Obsessive–compulsive disorder)だなあと正直なアメリカ人は思っているようです。
頚椎や腰椎を痛めることも
また、体を上手に支えられない人は、座っているときに常に首を傾けたまま字を書いていたり、あるいは体を前に倒して字を目に近づけすぎて書いている人もいます。体のバランスを取れないのでそういう姿勢になってしまうのは理解できるのですが、頚椎を痛めてしまう可能性があり、かといって本人の中でその姿勢に固執性をもっていることもあるので、どこまで注意したらいいのか難しいです。スコ座りにしても腰で座っているので、腰椎を痛める可能性があります。
いずれにせよ、きちんと理解者や支援者が必要なタイプではあります。
発達障害の人が体のバランスを取るのが苦手な理由
発達障害のある人の中には、姿勢の保持やバランス感覚に困難を抱える人がいます。これは、感覚統合の不全や小脳・前庭系の情報処理のアンバランスによるものと考えられています。たとえば、立っているときにふらついたり、じっと座っていられない、ジャンプや片足立ちが極端に難しいなどの特性が現れます。
視覚・聴覚・触覚・深部感覚(固有受容感覚)などがうまく統合されないと、「自分の身体の位置や動き」が認識しづらくなり、空間内で安定することが難しくなります。また、重心移動や筋緊張の調整がうまくできない場合、「転びそう」「支えられない」といった反応になりがちです。
特にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)では、身体の動きを意識的に制御する力や空間認知の精度に偏りが見られるケースもあります。これは「運動能力が低いから」ではなく、感覚入力に対して適切な運動出力を返すことが苦手な認知的特徴によるものであり、理解と支援が求められます。
リズムに合わせた動きや、重力を感じる遊び(ブランコ・ボール・トランポリンなど)を通じて、バランス感覚の発達を促すことができます。
正中線の認識の困難と、改善のためのアプローチ
正中線とは
正中線とは、人の身体を左右対称に分ける中心軸であり、姿勢・動作・空間認知を安定させる基本的な感覚のひとつです。発達障害のある人の中には、この正中線が「ぼやけている」または「うまく取れない」という特徴があり、自分の左右の感覚が不均等になったり、どちらの手を使えばよいか分からない、身体が左右に傾きやすいなどの状態が見られます。
この困難は、固有感覚(筋肉や関節の位置を感じる感覚)や触覚処理、視覚との統合不全が関与していることが多く、身体の中心を意識する訓練が効果的です。
改善には、以下のようなアプローチがあります:
- 正中線を横切る活動(例:右手で左側のものを取る動き) → 脳の左右をつなぐ「脳梁」の働きを促進し、身体の中心の感覚を養う
- 鏡を使った姿勢調整 → 自分の体の左右の偏りを視覚的に認識することで、自己修正力を高める
- バランスボールや体幹トレーニング →体の軸を取る意識を育てると同時に、筋感覚を強化
- クロスクロール運動やくねり運動 →リズミカルに左右を交差する動作を取り入れることで、正中線感覚が育つ
指導者や支援者が、「軸を感じさせる声かけ」や「中央に基準点を意識させる工夫」を加えることで、日常生活の動作にも安定感が増します。
他に解決策としては、
・水泳をする
・感覚統合訓練を受ける
・原始反射の統合ワーク
などがあります。