先日「2次元に行きたい」でご説明しましたが、発達障害(神経発達症)の人の中にはアニメなどの世界に異常に執着する人がいます。その理由としては、
1,キャラクターの顔を判別しやすい(現実の人間の顔の表情を読むのが苦手)
2,コミュニケーションが彼らにとっては理解しやすい
というのがあるのですが、他にも理由があります。
それは、当事者の視覚機能の問題で、
本当に現実世界を2次元の画像を重ねたように見ている
という人がいる、ということです。
ある生徒さんは、目の機能に問題(両眼視機能の異常?、近くを見るときに両眼がうまく寄らず視野が交差しない、眼球運動の協調性が弱い—輻輳不全?)があり、大学の眼科で検査を受けたのですが、そこで、「この子は、平面の映像を重ねたように見えている」と言われたそうです。
このタイプの視覚機能をもっている人の場合、勉強をする際にいろいろと困難になることがあります。
目の移動ができないために、非常に狭い視野しか見ておらず、問題の全体を見ていない、あるいは重要な「注」や図表が書いてあるのに気が付かない、ということがあります。また、本人自身は気がついてない「盲点」が多く、場所によっては全く見えていない、見ていないということがあります。現実世界を2次元の画像を重ねたように見えているために、距離感がわからないことが多かったり、(本人の主観的には)探したい情報が画像の中で埋没してしまい、見たい情報を掴むことができない、ということが起こります。
2次元に親和性をもつのはむしろ自然
このような視覚的な特性を持っている場合、3次元(現実世界)よりも2次元の世界(アニメや映像)の方により親近感を感じるのはむしろ当然だと言えるでしょう。彼らにとっては2次元の画像が貼り合わされた情景が本来の姿なのです。
「立体視障害(ステレオブラインドネス)」または「両眼立体視の欠如」
医学的・視覚心理学的には「立体視障害(ステレオブラインドネス)」または「両眼立体視の欠如」と呼ばれます。
症状
- 物体の奥行きや立体感が認識できない
- 世界が平面的に見える(まるで2D映像を重ねたよう)
- 距離感の把握が困難(階段の段差や車との距離など)
- 視覚疲労や集中困難を伴うこともある
原因とメカニズム
| 原因カテゴリ | 詳細 |
|---|---|
| 両眼視差の欠如 | 左右の眼から得られる微妙な映像差(両眼視差)を脳が統合できないことで、立体感が生じない |
| 輻輳不全 | 近くを見る際に両眼が内側に寄らず、視線が交差しないため、奥行き情報が得られない |
| 斜視(特に外斜視) | 両眼の視線が一致しないため、脳が片眼の情報を抑制し、立体視が成立しない |
| 視覚発達の遅れや未発達 | 幼少期に両眼視が適切に発達しなかった場合、立体視能力が獲得されないことがある |
| 脳の視覚統合障害 | 両眼からの情報を統合する脳の領域(後頭葉など)に機能障害がある場合 |