発達障害(神経発達症)の人の中には、心の年齢(精神年齢)が実際の年齢よりもかなり低い人がいらっしゃることは以前指摘したとおりです。
心の年齢が低いことは、当事者が青年期から社会人になるあたりの年齢で、たいてい大きな問題として生じてきます。
- 大人の世界の人間関係やコミュニケーションを理解できない
- 自分の感情や身の回りのことをコントロールできない
- 性の問題でトラブルを起こす
といったことになります。
ここで大きな挫折を経験して、そのまま引きこもり、といった道に進んでしまう人は数多いです。
もちろん、すべてのこのタイプの人が困難な人生になるわけではなく、
- スポーツや芸術の天才で、持っている能力で社会で成功した人
- (上記と同じですが)、運良く本人にとって最適のキャリア、職場を選ぶことができた人
- 良き理解者がいて、人間関係のよき緩衝材となってくれている人がいる人
などはうまくいっています。
死ぬまで子どもだったモーツァルト
音楽家のモーツァルトは、伝記や逸話から、おそらく死ぬまで “子ども” だったように思われますが、芸術家としてはあれだけの功績を残しました。それでも最後は無縁墓地に投げ込まれる人生でしたが・・・・
男子3日会わざれば・・・
この「幼い」という問題ですが、すべての人がこの状態で続くわけではなく、青年期に一気に、人間的(心)な成長を遂げる人がいます。
私が以前教えさせていただいていた生徒さんの中にも、大学生になって久しぶりに会うと、びっくりするくらい人間的に成長した人がいました。まさに「男子三日会わざれば刮目して見よ」ということわざの通りです。
定型発達の子どもさんは、たいていは教育学、発達心理学のモデル通りの段階的な発達をすることが多いですが、発達のお子さんはやはりそれとは外れた成長をすることがあります。脳の発達においても、ある時期においてはなかなか発達しない一方、ある日一気に脳の統合が進むことがあります。
発達障害(神経発達症)の人が抱えている問題として、「幼い」という問題とともに、「心の理論」がわからないという問題があるのですが、これも、(残念ですが)年齢を重ねてもあまり進歩がない当事者がいる一方、人生のある時期に一気に「心の理論」を理解して、他者の立場や感情を推測するできるようになるところまでいく人もいます。
心の理論とは
「心の理論」(Theory of Mind)とは、他者の心の状態(意図、信念、欲求、感情など)を理解し、推測する能力のことを指します。この能力は、他者の行動を予測し、適切に対応するために重要です。
ですから、「子どもが幼い」ということに関して、過度に悲観的になることは必要ないです。「なるようになる」と心を大きくもっていきましょう。