京都の西部地域で家庭教師を行っております。主に発達障害のお子さんの家庭教師をしております。


うまく言語を発声できないとき


発達の人が勉強できない理由として様々なことがありますが、他に、「発声を学習できていない」というのが理由のときもあります。

聞こえているが発声できていないときがある

発達障害(神経発達症)の人が、なかなか適切な発声を覚えられなかったり、あるいは似た発音の単語(例:sink と sing)を聞き分ける、発音を区別する、と言った場合、どのようなことが考えられるでしょうか。

まず考えられるのが、「聞く」能力に問題あるケースです。音を物理的に聞こえていない(例:ある音域だけしか聞こえていない)、あるいは認知的に聞き分けていない(例:音の違いを脳の中で分類できていない)ということです。

しかし、それとは別に、「きちんと聞こえているが、本人の発声システムと適切につながっていない」あるいは「きちんと聞こえているが、適切な発声方法を学習できていない」というケースもあります。

うまく発声できていない原因

前者は、口腔外科などの先生に見ていただいて、どのような問題が生じているかみていただいたほうがいいでしょう。あるケースでは、口蓋裂がかなり深い部分にできていて発音に問題があった方もいらっしゃいました。

後者は、乳幼児期に発音の学習がうまくできていなかったことが考えられます。多くの定型発達の方は、乳幼児期に周りの人の発声を聞いて、それを鸚鵡返しに発音することで発声を学習していきますが、発達(特に自閉系の人)の人の中には、それをしていないために発音を学習できていないことがあります。自閉系の脳の特徴としては、相手の動作に反応するという「ミラー細胞」の働きが乏しいということがわかっており、相手の動作から学習するのが苦手だと言われています。そのため独特の発音になってしまっていることがあります。

Success

This is a success alert.言語聴覚士(ST)は、こうした背景を踏まえて、模倣に頼らないアプローチを取り入れることが重要です。たとえば、視覚的な提示を重視し、口の形や舌の位置をイラストや動画で明示したり、鏡を使って子ども自身が動きを確認できるようにします。また、口や舌の動きを段階的に分解して練習し、身体の動きとして認識しやすくする工夫も有効です。加えて、触覚や動作模倣を促すために、顔まわりに軽くタッチする、口元に風を当てるといった感覚入力の工夫も取り入れられます。

さらに、音声だけでなくリズムやメロディを活用して、音の長さや高さの調整を練習する活動や、言葉に合わせた身体の動き(ジェスチャー)を組み合わせて音と意味を結びつける支援も効果的です。大切なのは「音を聞いてまねる」ではなく、「自分の身体で音を作る」「意味のある音として実感する」という視点でアプローチすることです。

言語聴覚士の支援を受ける

言語聴覚士の支援を受けたほうが良い場合としては、

発語やことばの発達が遅れている場合

言語聴覚士による「発語の刺激や単語の組み立てトレーニング」とは、子どもが言葉を発しやすくするような環境づくりや練習のことを指します。たとえば、絵カードやおもちゃを使って「ボール」「ちょうだい」など、意味と音が結びついた単語を楽しみながら覚える活動を行います。また、「りんご たべる」など二語文を構成する練習では、語順や助詞の使い方も少しずつ導入していきます。音やことばへの注目を引き出す工夫も大切で、「まねっこ遊び」やリズムに合わせた発声練習などを通して、発語の意欲を高める支援が行われます。重要なのは、無理にしゃべらせるのではなく、楽しいやり取りの中で自然に言葉を引き出すことです。

聞き取りや理解の困難がある場合(受容言語の障害

受容言語に困難がある子どもに対して、言語聴覚士は「だれが」「なにを」「どうする」といった文の構造を意識的に理解する力を育てるトレーニングを行います。たとえば「お母さんが りんごを むく」のような簡単な文を絵カードと一緒に提示し、それぞれの役割を確認します。子どもには登場人物や動作、対象を順に整理する練習をさせ、文意を正しく捉える力を養います。また、聞き取った言葉を図に描いたり、身体を使って動作を再現したりすることで、多感覚的に理解を促進します。これにより、指示理解や日常会話への対応力が向上し、集団場面での困りごとが軽減されていきます。

会話のやりとり(語用論)の困難

会話のやりとりに困難がある子どもに対して、言語聴覚士は「語用論的スキル」の育成を支援します。たとえば、ロールプレイを使って「話す」「聞く」の順番を練習したり、会話中の相手の表情を観察して気持ちを推測する課題を行います。また、「あいづち」「話題の切り替え」「会話の終わり方」なども視覚教材やシナリオを通じて学びます。これらの練習を通して、話しすぎたり、無反応になったりする場面が減り、相手と気持ちよくやりとりできるようになります。特性に配慮しながら、実生活に近い形で反復練習を行うことで、自然な対人スキルの習得が期待されます。

発音や構音の問題がある場合

構音の問題がある子どもに対して、言語聴覚士(ST)はまず誤った発音の原因となる舌や唇の動きの癖を観察します。その上で、例えば「さ」行が「た」行に置き換わるようなケースでは、舌先の位置や息の出し方を丁寧に説明し、鏡を使って正しい口の形や舌の動きを子ども自身が視覚的に確認できるようにします。また、発音練習は遊びの要素を取り入れながら繰り返し行い、無理なく定着を目指します。保護者にも家庭でのサポート方法を共有し、一貫した練習環境を整えることが効果的です。こうした一対一の関わりにより、徐々に明瞭で聞き取りやすい発音へと変化していきます。


PAGE TOP